河出文庫『シャ−ロック・ホームズ対切り裂きジャック』(ISBN:4309462413)

ともに活動時期がかぶっていることもあって、ホームズのパスティーシュとしてはエラリー・クイーンの『恐怖の研究』やエドワード・B・ハナの『ホワイトチャペルの恐怖』などが既にありますが、私のようにシャーロック・ホームズ切り裂きジャックも好きで、それなりに詳しい人にはオススメ。もっともパロディとは読み手に元ネタの知識をあらかじめ要求する点で間口が狭いわけですが、本書もまったく知識の無い人(そんな人がこの本を手に取るとも思えませんが)には凡作かと思われます。
他のホームズ対ジャックものでもそうですが、ホームズ側では「何故この事件が語らざる事件となったのか」、ジャック側では「切り裂きジャックの正体は誰だったのか」、この二点をどう処理するかが作者の腕の見せ所となります。クイーンともハナとも違った切り口で、読んでいて推測はつくものの、個人的にはホームズとジャックのそれぞれのパズルのピースを上手く組み合わせたものだと感心しました。